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海外感染症流行情報 2018年8月 (東京医科大学病院 渡航者医療センター)

・コンゴ民主共和国でエボラ熱の新たな流行が発生

コンゴ民主共和国の北東部にある北キブ州で7月頃からエボラ熱の流行が発生しています。8月22日までに患者数は103人(疑いを含む)で、63人が死亡しました(WHO 2018-8-24)。同国の北西部では今年の4月からエボラ熱の流行が発生しており、この流行は7月までに終息しました。新たに流行の発生した北キブ州はウガンダやルワンダと国境を接し、交通の盛んな場所です。また、政情不安定な地域で100万人近い難民が生活をしています。このため、今回の流行の制圧には困難が予想されます。WHOは開発段階にあるエボラワクチンの接種を患者の接触者や医療従事者などに行っています。

・タイでジカウイルス感染の妊婦に小頭症の胎児発生

タイで行われた最近の調査では、東南アジア亜型のジカウイルスに3人の妊婦が感染していることが明らかになり、このうち一人の妊婦(妊娠9週で感染)の胎児に小頭症が確認されました(Emerging Infectious Disease 24:1759, 2018)。ジカウイルスにはアフリカ型とアジア型があります。アジア型はさらにアメリカ亜型と東南アジア亜型に分けられ、前者は妊婦が感染すると胎児に小頭症をおこすことが知られています。一方、東南アジア亜型で小頭症をおこすことは稀と考えられてきました。今回の調査結果は、東南アジアで妊婦がジカウイルスに感染した場合も、胎児に小頭症をおこす危険性があることを示すものです。

・東南アジアでのデング熱流行状況

東南アジア各地は雨季を迎え、デング熱の流行が報告されています(WHO西太平洋 2018^8-16)。ほとんどの国で患者数は例年並かそれ以下ですが、今後も暫く雨季が続くため警戒が必要です。

・ミャンマーで住血吸虫症が流行

ミャンマーで住血吸虫症の患者が今年だけで500人以上発生しています(FitForTravel 2018-8-2)。住血吸虫は川や湖などの淡水中に棲息しており、この水に接触すると皮膚から感染し、肝臓や腸の障害をおこします。このため、流行地域では淡水で泳がないように注意する必要があります。首都ネピドー近郊のインレー湖も住血吸虫の感染リスクがあるとされています。

・最近の中東呼吸器症候群(MERS)の流行状況

2017年7月から1年間に全世界で189人のMERS患者が発生し、60人が死亡しました(WHO 2018-8)。患者発生国は、サウジアラビアが182人で最も多く、オマーン、UAEが各3人、マレーシアが1人でした。患者は中高年者が多く、心臓病など慢性疾患のある者が7割を占めています。感染経路はラクダとの接触が37人、患者からの二次感染が45人でした。中東などの流行地域に滞在する渡航者は、ラクダと接触しないように十分な注意をしてください。

・米国CDCがジカウイルスの性感染予防指針を更新

米国CDCは8月にジカウイルスの性行為感染に関する予防指針を更新しました(米国CDC MMWR 2018-8-7)。主な変更点は、流行地域から帰国した男性が安全な性行為を心がける期間を6か月から3か月に短縮した点です。ジカウイルスは蚊に媒介される感染だけでなく、性行為による感染もおこします。これを予防するため、流行地域に滞在した男性は症状がなくても、帰国後一定期間、安全な性行為(コンドームを使うなど)を心がける必要があります。これは感染者の精液中にウイルスが長期間検出されるためですが、精液中のウイルスに感染性があるのは最長3か月との知見が最近得られています。なお、WHOの指針ではこの期間が引き続き6か月になっています。