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海外感染症流行情報 2017年11月 (東京医科大学病院 渡航者医療センター)

・オーストラリアでロスリバー熱が流行

オーストラリア西部のパースなどでロスリバー熱が流行しています。7月から11月中旬の患者数は200人で昨年の2倍の数です(英国FitForTravel 2017-11-13)。ロスリバー熱は蚊に媒介される感染症で、オーストラリアやパプアニューギニアなどで流行しています。発熱とともに関節痛をおこし、関節の症状は1年近く続くこともあります。オーストラリアはこれから夏のシーズンを迎えるため、滞在中は蚊に刺されないようにご注意ください。

・アジアでのデング熱の流行状況

11月になり東南アジアのデング熱流行は鎮静化しています(WHO西太平洋 2017-11-7)。今年はベトナムやラオスで例年を上回る流行がみられました。ベトナムでの患者数は11月初旬までに南部を中心に16万人にのぼっています。また、今年は南アジアでも流行が拡大しており、インドで11月中旬までに12万人(英国FitForTravel 2017-11-15)、パキスタン北部のペシャワールなどで6万人(WHO東地中海 2017-10-19)の患者が発生しました。

・中国での鳥インフルエンザH7N9の流行

先月の海外感染症流行情報で、「9月は中国で鳥インフルエンザH7N9型の患者が確認されなかった」と報告しましたが、2人の患者が確認されています(外務省務省海外安全ホームページ 2017-10-8)。情報を訂正するとともに、お詫び申し上げます。なお、10月は新しい患者は発生していません(WHO 2017-10-30)。

・ヨーロッパでの麻疹の流行

今年はヨーロッパ各地で麻疹の流行が報告されています。イタリアでは10月末までに4700人の患者が確認されました。また、ギリシャでも南部を中心に300人以上の患者が発生しています。麻疹は空気感染する病気で、ワクチン接種が最も効果的な予防方法です。日本では20歳代後半~30歳代の世代で麻疹の免疫力が低く、この世代の人が麻疹の流行国に滞在する際には、事前にワクチン接種を受けておくことを推奨します。

・マダガスカルのペスト流行は鎮静化

アフリカ南部のマダガスカルで8月から発生していたペストの流行は、11月になり鎮静化の傾向にあります。11月中旬までの累積患者数は疑いも含めて約2200人で、このうち195人が死亡しました(WHO 2017-11-20)。患者発生の推移をみると、11月にはピークを越えた模様です。患者の6割以上は首都のアンタナナリボを含むAnalanmanga地域で発生しており、患者の7割以上が肺ペストの症状をおこしています。マダガスカルでは山岳地帯などで毎年9月~4月にペストの流行がみられることから、今後も十分な警戒が必要です。

・ウガンダでマールブルグ熱の患者が発生

10月中旬、ウガンダ東部のKween地域でマールブルグ熱の患者が3人発生しました(WHO 2017-11-15)。患者は家族で、全員が死亡しました。このうちの一人は発症する前後、ケニアに旅行をしていましたが、二次感染はおきていない模様です。 マールブルグ熱はエボラ熱に近縁のウイルスでおこる感染症で、最近はウガンダなど東アフリカで患者発生がみられています。コウモリが感染源と考えられていますが、患者の体液などからも感染がおこります。

・ブラジルの黄熱流行

今年前半、ブラジル南部のミナス・ジェライス州やエスプリト・サント州で黄熱の大規模な流行が発生し、4月下旬までに3000人を越える患者が発生しました。その後、流行は鎮静化していますが、7月以降もサンパウロ州などではサルの集団感染が確認されています(米州保健機関 2017-10-27)。また、11月にはサンパウロ市で同州北部の住民など10人の疑い患者が発生しています(ProMED 2017-11-10)。ブラジルでは今後も黄熱の大規模な流行が発生する可能性があり、同国に滞在する際には黄熱ワクチンの接種を受けておくことを推奨します。