独立行政法人労働者健康福祉機構 東京産業保健推進センター
 ■トップ >> センターのご案内 >> 調査研究 >> 平成13年度
所長挨拶
事業案内
アクセスマップ
助成金
調査研究
講師派遣
調査研究
東京における労働衛生管理の実態について
主任研究者  
東京産業保健推進センター産業保健相談員 野田 一雄
共同研究者  
東京産業保健推進センター産業保健相談員 錦戸 典子
東京産業保健推進センター産業保健相談員 遠藤 俊子

1.はじめに

東京都内の事業場を対象として、労働衛生管理体制の実態及び健康づくり対策に関する意識や取組状況についてアンケート調査を行い、その実情を明らかにし、これを労働基準行政や産業保健関係者に提供し、心と身体の健康づくり対策の一層の推進に資することとした。

2.対象と方法

都内の労働基準監督署等が主催する「労働衛生週間説明会」、「安全衛生推進大会」、「健康づくり推進大会」等の場で、アンケート用紙を配布し、これを回収分析した。アンケートの配布は、平成13年9月から11月末までの期間で,12月末までに回収した。

アンケートの内容は、企業及び事業場属性、安全衛生管理体制の実態(50人以上と未満の事業場に分けて回答)、健康に関する意識、健康診断及び事後措置の実施状況、健康づくり対策に関する実態と意識、産業保健推進センター及び地域産業保健センターの認知度及び利用状況について、無記名で回答を求めた。

3.結果

配布したアンケート用紙は約5200で、回答が寄せられたのは980事業場(回答率18.8%)からであった。

回答のあった事業場の規模は、50人未満が274(28.0%)、50〜99人が262(26.7%)、100〜299人が314(32.0%)、300〜999人が90(9.2%)、1000人以上が17(1.7%)、無回答が23(2.2%)であった。

業種別には、製造業が242(24.7%)と最も多く、次いでその他の事業が214(21.8%)、建設業が134(13.7%)、卸・小売業が121 (12.3%)、運輸・貨物取扱業が103(10.5%)、情報処理産業が61(6.2%)、金融・広告業が41(4.2%)、ビルメン・警備業が41 (4.2%)、病院・社会福祉事業が12(1.2%)、無回答が11(1.1%)の順で続いている。

(1)安全衛生管理体制

規模50人以上の683事業場の安全衛生管理体制については、(安全)衛生委員会が設置されている事業場は560(82.0%)で、うち委員会を毎月開催していると回答したところが355(52.0%)で、毎月ではないが定期的に開催しているところを加えると655(66.6%)ととなる。衛生管理者については、選任している事業場は593(86.8%)と高く、産業医は専属産業医を選任しているところが177(25.9%)、嘱託産業医を選任しているところが440(64.4%)で、選任している事業場の合計は617(90.3%)であった。

産業医の主な活動内容としては、最も多かった回答が「健康診断結果についての意見を聴く」が446(22.5%)、次いで「健診後の保健指導」が370 (18.7%)、「一般的な保健指導」が366(18.5%)と続いているが、「安全衛生委員会への参加」は192(9.7%)、「社内の定期巡視」が 167(8.4%)と少なく、「特に活動していない」は45(2.3%)に上っている。

産業医への評価については、「熱心」が169(24.7%)、「普通」が381(55.8%)、不熱心が54(7.9%)と続いている。

(2)健康問題に対する意識等

医療費の将来の予測値に関しては、「知っていた」が233(23.8%)、「正確には知らなかった」が628(64.1%)、「知らなかった」が90(9.2%)、「無回答」が29(3.0%)となっている。

事業場としての健康づくり対策への考え方については、「積極的に取り組むべき」が163(16.6%)、「さらに真剣に取り組みたい」が507 (51.7%)、「具体的な取り組み方法が分からない」が106(10.8%)、「経済的・時間的な余裕がない」が154(15.7%)、「社員個人の問題である」が19(1.9%)、「無回答」が31(3.2%)となっている。

(3)健康診断と事後措置について

健康診断の実施については、「実施している」が963(98.3%)、「未実施」が8(0.8%)、「無回答」が9(0.9%)となっている。

健康診断結果に関して誰から意見を聴いているかについては、「産業医」が最も多く490(50.0%)、次いで「健診機関の医師」が357(36.4%)、「聴いていない」が98(10.0%)、「健診機関の産業看護職」が60(6.1%)と続いている。

健診後の事後措置については、「医師からの意見提出がなかった」との回答が530(54.1%)、「提出された意見のとおり実施したことはない」が17 (1.7%)、「無回答」が138(14.1%)で、提出された意見に基づき何らかの事後措置を行ったのは295(30.1%)であった。

(4)健康づくり対策に関する実態と意識について

事業場の健康づくり対策に係る関心度は、「ある」が464(47.3%)、「少しある」が370(37.8%)、「あまりない」が130(13.3%)、「ない」が10(1.0%)、「無回答」が6(0.6%)となっている。

健康づくり対策の現状については、「かなり力を入れて実施している」が71(7.2%)、「ある程度は実施している」が473(48.3%)、「ほとんど行っていない」が344(35.1%)、「全く行っていない」が83(8.5%)、「無回答」が9(0.9%)となっている。

この「ほとんど行っていない」「全く行っていない」427事業場にその原因を尋ねたところ、「社員の意欲不足」が最も多く238(55.7%)、次いで「健康づくり対策についての知識不足」が169(39.7%)、「資金的な問題」が114(26.7%)、「事業主の意欲不足」が103(25.5%)と続いている。

今後の健康づくり対策への意欲については、「大いにある」が72(7.3%)、「ある」が245(25.0%)、「検討してみたい」が526 (53.7%)、「ほとんどない」が109(11.1%)、「全くない」が11(1.1%)、「無回答」が17(1,7%)となっている。

当推進センターの知名度・利用状況については、「知っており、利用したこともある」が53(5.4%)、「知っていたが利用したことはない」が348(35.5%)、「知らなかった」が525(53.6%)、「無回答」が54(5.5%)であった。

4.考察

事業場の安全衛生管理体制については、各労働基準監督署の説明会等に参加している事業場を中心に実施したため、かなり良好であり、安全衛生委員会の設置状況、開催状況、衛生管理者及び産業医の選任状況、健康診断や事後措置の実施状況についてはかなり高いレベルにあることが窺える。

健康づくり対策への関心度については、「ある」「少しある」と回答したところが834(85.1%)と高いが、健康づくり対策の現状は、「ほとんど行っていない」「全く行っていない」が427(43.4%)に上っている。健康づくり対策への取組が遅れている原因としては、事業主や社員の意欲不足を取り上げたところが341(79.9%)、健康づくりに対する知識不足を取り上げたところが169(39.6%)、資金的な問題等を取り上げたところが114 (26.7%)あった。

開所以降3年あまり経過した当推進センターの知名度は50%にも達しておらず、利用したことがあると回答した事業場も5.4%に過ぎなかった。

5.まとめ

健康づくり対策に関する関心度や意欲の割に、現実的な取組は遅れており、事業主や社員の意欲不足や事業場側の具体的な知識不足が原因していることが窺える。

これらの点を克服することを意識しつつ、推進センターの知名度を上げ、利用促進を図っていく必要がある。


お問い合わせサイトマップサイトポリシー相談員専用
copyright (c) 2005-2007 Tokyo Occupational Health Promotion Center. All Rights Reserved.