独立行政法人労働者健康福祉機構 東京産業保健推進センター
 ■トップ >> センターのご案内 >> 調査研究 >> 平成12年度
所長挨拶
事業案内
アクセスマップ
助成金
調査研究
講師派遣
調査研究
中小規模事業所におけるメンタルヘルス活動の現状と対策
−産業保健推進センターと地域産業保健センターの連携を中心として−
研究代表者 東京産業保健推進センター 所長 佐々木健雄
研究代表者 東京産業保健推進センター 産業保健相談員 井上令一
共同研究者 同上 同上      小堀俊一
同上 同上      島 悟
栃木県精神保健福祉センター 所長 大西 守
東邦大学佐倉病院 助教授 黒木宣夫
順天堂大学医学部精神医学 講師 荒井 稔
杏林大学衛生学教室 教授 角田 透
同上 助教授 照屋浩司
大田地域産業保健センター 大森医師会理事 北條 稔
NKK鶴見保健センター センター長 廣 尚典
東芝本社 産業医 田中克俊
HOYA 産業医 小林祐一

1.中小規模事業場における労働者の精神的健康に関する実態調査

中小規模事業所の労働者1,889人を対象として、精神的健康に関する調査を施行した。年齢は18歳から75歳、男性78.4%、女性21.6%である。事業所規模は、50人未満が55.1%と過半数を占める。業種は製造業が大半であり、職種は生産が最も多い。

健康観は、「余り健康な方ではない」が17.7%、「健康ではない」が2.2%であり、約2割が不健康であると回答している。現病歴は、高血圧症5.3%、糖尿病2.5%、痛風1.2%などの生活習慣病の頻度がやや高い。職務満足は、「多少不満」28.1%、「かなり不満」 6.2%、「非常に不満」2.3%であり、1/3以上が不満を抱いている。さらに雇用不安は、「少し不安」29.4%、「多少不安」26.3%、「かなり不安」7.6%、「非常に不安」4.2%であり、約2/3が雇用不安を抱いている。ストレス感は、「少しストレスがある」24.8%、「多少ストレスがある」24.7%、「かなりストレスがある」9.8%、「非常にストレスがある」3.5%であり、約2/3がストレスを感じている。

精神健康度の指標として用いた一般健康調査表(GHQ)の総得点において2/3を区分点とすると、対象者の41.1%が不健康状態にあると考えられる。年齢との関係では、40代が最も精神健康度が低く、20代・30代、50代、60代になるにつれて精神健康度が高くなる。婚姻状況では、既婚が最も精神健康度が高い。事業所の規模別では、300-499人が最も精神健康度が低く、次いで100-299、30-49人、50- 99となり、30人未満が最も精神健康度が高い。雇用形態では、正職員が最も精神健康度が低く、次いでパート、派遣社員である。職種では、営業と開発・研究で最も精神健康度が低く、次いで生産、一般管理、企画・調整と続き、人事・労務が最も精神健康度が高い。職位では、一般が最も精神健康度が低く、次いで役員、係長クラスであり、課長クラス、部長クラスは精神健康度が高い。残業時間との関係では、最も健康度の低いのは60-80時間で、残業時間が短いほど精神健康度は高くなる。
この結果は、中小規模事業所の労働者の主観的健康観に比べて、実際の精神健康度はより不良であり、乖離の存在することを意味している。すなわちメンタルヘルスに関する気づきの重要性を示唆するものである。また回答者の4割がメンタルヘルス不良群に属するという結果から、中小規模事業所の労働者に対して、早急にメンタルヘルス対策を講じることが必要であると考えられる。この背景として、所定時間外労働などの職場のストレスがあると考えられるが、このことを念頭においた対策が望まれる。

2.中小規模事業場の事業主のメンタルヘルス意識に関する調査

大田区内の132中小規模事業所を対象として、事業主のメンタルヘルス意識に関する調査を施行した。事業所規模では10人以下が最多であり、51人以上は10%に満たない。業種では大部分が製造業である。

従業員の健康管理に大切なものとして、こころの健康対策をあげた事業主は過半数である。メンタルヘルスという言葉は、精神の病気や意欲・体調の不安定と受け止められている場合が多い。心の健康問題を経験したことのある事業主は1/3以上であり、無断欠勤・頻回欠勤・遅刻、周りの人との摩擦・人間関係の悪化などで問題が顕在化している。メンタルヘルスに関係のある事柄として、人間関係に関する問題をあげた事業主は7割を越える。こころの健康対策が必要と答えた事業主は約7割であり、その理由としては、生産性の向上、円滑なコミュニケーション、従業員の健康管理に欠かせない、をあげた事業主が多い。こころの健康対策として心がけていることは、懇談の場の設定、スポーツ・レクリエーションなどの充実などである。こころの健康対策が十分にできない理由は、相談者・カウンセラーの得られないことが最も多く、その他は、経済的に余裕がない、人的余裕がない、時間的余裕がない、プライバシーの確保が困難、である。こころの健康対策に取り組みたいと思う事業主は6割を越える。取り組みたい内容は、懇談の場の設定などが主である。地域産業保健センターの「メンタルヘルス相談事業」について知っている事業主は13.9%に過ぎなかった。

この結果から、中小規模事業主はメンタルヘルス対策の必要性を感じており、実際にケースに遭遇して対応に苦慮していることが明らかになった。さらにメンタルヘルス対策を実施したいと思っても、経済的な問題よりも専門家の確保のできないことが大きな阻害要因であることが示された。また地域産業保健センターの「メンタルヘルス相談事業」の周知の進んでいないことが分かった。今後、産業保健推進センターなどにおいて、積極的に専門家に関する情報提供を行うことが必要である。

3.東京産業保健推進センターにおけるメンタルヘルス相談に関する調査

東京産業保健推進センター開所以来、平成13年2月までに行われたメンタルヘルス関連の相談に関して調査を行った。相談件数は、144件であり、全相談件数の7.1%に当たる。相談方法は、殆どが来所である。相談者の内訳では、労務管理担当者が最も多い。事業所規模では、 500人以上が最も多く、次いで100-500人規模である。相談内容はメンタルヘルスのシステムづくりが最も多く、次いで事例、講演である。

この結果は、東京産業保健推進センターは発足から日が浅いにもかかわらず、メンタルヘルスに関する相談機能を十分に果たしていることが示されている。さらにケースの相談よりもメンタルヘルスのシステムに関する相談の多いことは、望ましい利用のあり方であると考えられる。今後、こころの健康づくりの指針に沿って、教育・啓蒙を進めていくことが必要である。


お問い合わせサイトマップサイトポリシー相談員専用
copyright (c) 2005-2007 Tokyo Occupational Health Promotion Center. All Rights Reserved.