海外感染症流行情報 2025年2月 (東京医科大学病院 渡航者医療センター)
(1)全世界:インフルエンザ、COVID-19の流行状況
北米ではインフルエンザの患者数が2月に入っても増加していますが、ヨーロッパや東アジアでは減少傾向にあります(WHO Influenza update 25-2-20)。日本でも2月になり患者数が減少しており、ほとんどの都道府県では注意報以下になりました(厚生労働省 25-2-21)。
COVID-19の患者数は日本や米国で2月になり減少しています(厚生労働省 25-2-21、米国CDC 25-2-21)。欧州では一部の国を除き、今冬は患者数増加がみられませんでした(ECDC 25-2-21)。ウイルスの種類はXEC型が半数近くを占めていますが、今年に入りKP型の子孫にあたるLP8.1型が増加傾向にあります(WHO 25-2-13、国立感染症研究所 25-2-17)。
(2)全世界:エムポックスの流行状況
エムポックスで重症化しやすい1b型の患者は、アフリカのコンゴ民主共和国、ブルンジ、ウガンダなどで引き続き発生しており、ここ1ヶ月はウガンダでの患者数が増えています(WHO Mpox 25-2-13)。アフリカ以外ではタイ、英国、UAEなどで、新たな患者が確認されました。
(3)アフリカ:東アフリカでのウイルス性出血熱の発生
東アフリカのウガンダでエボラ出血熱の患者が発生しました。首都カンパラ近郊などで9人の患者が確認されており、このうち1人が死亡しました(WHO 25-2-21)。初発患者は医療従事者で、家族内および病院内で拡大した模様です。タンザニアの東部では、マールブルグ熱の流行が1月中旬から発生していますが、2月になり患者の増加は見られていません、(WHO 25-2-14)。現在までに疑い患者は10人で(2人確定)、全員が死亡しました。
(4)北米:米国での鳥インフルエンザH5N1型の流行状況
米国で昨年から発生している鳥インフルエンザH5N1型ウイルスの患者は、2月下旬までに70人になりました(米国CDC 25-2-24)。このうち、ウシや家禽の牧場労働者が65人で、大多数が軽症ですが、2月中旬にワイオミング州で発病した患者は、自宅で飼っている家禽から感染しており、入院中です。
(5)北米:米国とカナダでの麻疹の流行
米国では今年になり麻疹患者が93人発生しています(米国CDC 23-5-2-21)。大多数の患者はテキサス州の大学での感染でした(ProMED 25-2-21)。カナダでも東部のオンタリオ州で、1月から92人の麻疹患者が報告されています(ProMED 25-2-22)。欧米諸国に滞在する場合でも、麻疹感染の既往が無い人や、ワクチンを2回受けていない人は、ワクチンの追加接種を受けることを推奨します。
(6)南米:ブラジル、コロンビアでの黄熱患者発生
米州保健機関(PAHO)は25年2月6日に南米での黄熱流行に関するアラートを発しました。患者が都市周辺でも発生しているためです。ブラジルではサンパウロ州で11人の患者が報告され、うち8人が死亡しました(ProMED 25-2-15)。 コロンビアでも首都ボゴダ近郊のトリマ県で、29人の患者(14人死亡)が報告されています(ProMED 25-2-16)。
(7)南米:ブラジルでのデング熱患者増加
中南米では昨年、過去最多となる1300万人のデング熱患者が発生しており、このうち1000万人がブラジルからの報告でした(米州保健機関 25-2-7)。同国のサンパウロ州では、今年1月も昨年同期の2倍にあたる20万人の患者が確認されており、さらに大きな流行になることが懸念されています(ProMED 25-2-24)。