海外感染症流行情報 2024年1月 (東京医科大学病院 渡航者医療センター)

(1)全世界:新型コロナ、インフルエンザの流行状況

新型コロナに関しては、23年12月からオミクロン株の派生型JN.1が世界的に拡大しており、1月中旬の時点で検出ウイルスの65.5%を占めています(WHO 24-1-19)。この影響などで、12月末までに新型コロナの感染者数は欧米やアジア諸国(シンガポール、インドなど)で増加しましたが、1月中旬になり減少傾向にあります(USCDC 24-1-19、ECDC 24-1-19))。日本ではJN.1が1月中旬までに半分以上を占めており、感染者数も増加を続けています(厚生労働省 24-1-19)。
インフルエンザの感染者は、日本や米国で12月に増加しましたが、1月に入り減少傾向にあります(USCDC 24-1-12、厚生労働省 24-1-19)。ただし、今後もB型ウイルスの流行が続くことが予測されます。

(2)アジア:インドネシアでのポリオ流行

インドネシアでワクチン株由来のポリオ患者が2例報告されました(WHO 24-1-11)。いずれも小児でスラバヤ近郊のマドゥラ島で感染したと推測されています。同国では22年10月から、今回の2例を含む6例のポリオ患者が確認されており、長期滞在する際にはワクチンの追加接種を受けておくことが推奨されます。

(3)アジア:タイでのジカ熱流行

タイでは23年にジカ熱の患者が700人以上報告されており、バンコク東南部のチャンタブリーやトラートなどで発生が多くみられます(ProMED 24-1-12)。このうち33人が妊婦で、この妊婦から生まれた13人の新生児に異常が認められました。ジカ熱は蚊に媒介される感染症で、デング熱に似た症状を起こします。妊婦が感染すると、胎児に小頭症などの先天異常を起こす可能性があるため、タイに妊娠中の人が滞在する際には、蚊に刺されない対策を十分とるようにしてください。

(4)アジア:アジアでデング熱流行始まる

マレーシアでは23年に例年を上回る12万人のデング熱患者が発生しました。24年も1月から昨年以上の数の患者が発生しています(WHO西太平洋 24-1-18)。バングラデッシュでも23年は32万人のデング熱患者が発生し、1705人の死亡が確認されました。24年1月も700人以上が入院し、10人が死亡しています(ProMED 24-1-19)。両国ともに今年も患者数の増加が予測されます。

(5)ヨーロッパ:英国で麻疹が流行

英国中部のウエスト・ミッドランド地方(バーミンガムなど)で、23年10月から麻疹患者が300人以上発生しました(ProMED 24-1-12)。患者の多くは小児で、新型コロナの流行中に麻疹ワクチンの接種が滞ったことが一因と考えられています。日本から英国に渡航する人で、麻疹の未罹患者や、麻疹ワクチンの接種を2回受けていない人(主に30歳代~50歳代)は、ワクチンの追加接種を受けることを推奨します。

(6)南米:アルゼンチンで西部ウマ脳炎の患者発生

アルゼンチンのブエノスアイレス州などで、23年12月から西部ウマ脳炎の患者が21例発生しました(米州保健機関 24-1-10)。このうち1名は死亡しています。西部ウマ脳炎は蚊に媒介される感染症で、発熱とともに脳炎を起こす病気です。アルゼンチンでは20年来流行がありませんでしたが、23年12月頃からアルゼンチンやウルグアイの馬の間で流行が拡大していました。患者の多くは成人男性とのことです。