海外感染症流行情報 2022年6月 (東京医科大学病院 渡航者医療センター)

全世界:新型コロナウイルスの流行状況

6月は新型コロナウイルスの感染者数に大きな変化がみられていません。ただし、南東アジア(インド、インドネシアなど)、中東(UAE、バーレーンなど)、一部のヨーロッパ諸国(フランス、イタリアなど)で、感染者数がやや増加しています(WHO Corona virus disease 2022-6-22)。流行しているオミクロン株の種類としては、世界的にBA2が半数近くを占めていますが、BA.4やBA.5も増加傾向にあります。BA.4、BA.5はBA.2よりも感染力がやや強い可能性があり、今後の動向に注意が必要です。
なお、日本では6月からは水際対策が大幅に緩和され、入国時の検査や入国後の健康監視が、一部の国からの入国者に限定されています。詳細は厚生労働省のホームページをご覧ください。

水際対策|厚生労働省|日本政府 (mhlw.go.jp)

全世界:サル痘の流行状況

欧米諸国などで発生していたサル痘の患者数は6月も増加し、6月中旬までに世界42か国で2000人以上の患者が確認されています(WHO 22-6-17)。患者の多くは男性間性交渉者(Men who have Sex with Men :MSM)で、感染者との性行為などによる濃厚接触で感染が拡大している模様です。患者の症状はほとんどが軽く、2~4週間で回復しています。

全世界:小児の急性肝炎

小児の原因不明の急性肝炎の患者は、その後も増加しています。患者数はヨーロッパで6月中旬までに449人になり、このうち半数は英国での発生でした。(ヨーロッパCDC 22-6-17)。米国でも5月下旬までに216人の患者が確認されています。なお、原因は相変わらず不明のままで、アデノウイルスや新型コロナウイルスの感染が考えられています。

アジア:東南アジアでデング熱患者が増加

東南アジア各国でデング熱の患者数が増加しています(WHO西太平洋 22-6-16)。とくにシンガポールでは6月中旬までに1万1000人となり、昨年同期より400%以上増えています。マレーシアでは2万4000人、ベトナムでは6万人、フィリピンでは4万人(Outbreak news today 22-6 -22)の患者が発生しており、いずれも昨年より増加しています。東南アジアはこれから雨期や暑期を迎えるため、患者数がさらに増加する可能性があります。

アジア:マレーシアで手足口病が流行

マレーシアで小児を中心に手足口病が流行しています(Outbreak news today 22-6-21)。6月中旬までに患者数は10万人に達しており、昨年の40倍近い数になっています。患者の発生は首都周辺のスランゴール州などで多くみられます。手足口病はコクサッキーウイルスやエコーウイルスが原因で、患者からの飛沫で感染します。発熱や口内炎、手足の発疹などがみられ、稀に脳炎を起こすこともあります。予防は手洗いやマスクの着用など新型コロナ対策と同様です。  

南半球:季節性インフルエンザの流行が拡大

冬を迎えた南半球で、季節性インフルエンザの流行が拡大しています(WHO Influenza 22-6-13)。流行株としては、オーストラリアや南米のチリなどでA(H3N2型)、南アフリカでA(H1N1型)が主に検出されています。南半球では2019年以来、季節性インフルエンザの流行が発生していませんでした。北半球でも今年の冬は3年ぶりの流行が発生する可能性が高くなっており、秋にはインフルエンザワクチンの接種を受けておくことを強く推奨します。