海外感染症流行情報 2021年12月 (東京医科大学病院 渡航者医療センター)

全世界:新型コロナウイルスの流行状況

新型コロナウイルスの感染者数は欧米諸国やアフリカで増加傾向にあります(WHO Corona virus disease 2021-12-21)。またアジアでは韓国やベトナムで感染者数の増加がみられています。こうした流行の再燃は、北半球での冬の到来やオミクロン株の発生が原因になっています。オミクロン株は11月にアフリカ南部から拡大し、12月下旬までに世界100か国以上で感染者が確認されています。今後、世界の流行は、デルタ株からオミクロン株に置き換わっていくものと予想されます。この新しい変異株は感染力が強いとともに、ワクチンの効果が減弱しており、予防のためには追加接種が必要です。
日本ではオミクロン株の発生にともない、11月末から水際対策が再び強化されました。流行国からの入国者については、検疫所の指定する施設で3日から10日の停留措置がとられます。また、入国後に感染者が発見された場合は、搭乗した航空機の乗客全員が濃厚接触者として健康監視を受けます。日本での水際対策の概要は下記HPをご参照ください。なお、日本国内での感染例が12月下旬までに東京、大阪、京都、福岡などで確認されており、今後、国内でもオミクロン株の流行が拡大していくものと予想されます。
水際対策に係る新たな措置について|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00209.html

全世界:季節性インフルエンザの流行

北半球温帯でのインフルエンザの流行は低いレベルですが、昨シーズンに比べると増加傾向にあります(WHO Influenza 2021-12-20)。ヨーロッパや北米ではA(H3N2)型が、東アジアではB型の流行がみられます。ヨーロッパではロシア、スウエーデン、トルコなどで患者が増加しており、バルカン半島のコソボでは急増しています(ECDC 2021-12-17)。米国では東部から中部にかけて患者数が増加している模様です(CDC Flu view 2021-12-11)。

アジア:中国で鳥インフルエンザ患者の発生続く

今年は中国でH5N6型の鳥インフルエンザ患者が多発しており、最近1ヶ月間でも5人の患者が確認されました(Outbreak News Today 2021-12-8, 15)。患者の発生は湖南省で多く、いずれも重症です。2014年以来の患者総数は57人で、このうち31人が今年の発生となっています。

アジア:南アジアでの蚊媒介感染症の流行

インド北部のウッタル・プラデーシュ州で10月からジカ熱の流行があり、2000人以上の患者が発生しました。米国CDCはレベル2の注意喚起を出しています(CDC 2021-12-9)。また、同州に隣接するデリー周辺でも11月末にジカ熱の患者が確認されました(英国Fit For Travel 2021-12-14)。デリー周辺でのジカ熱患者の確認は今回が初めてです。インド南部のケララ州でもジカ熱の患者発生が続いています。
一方、パキスタンでは11月下旬までに約5万人のデング熱患者が発生しており、183人が死亡しました(WHO 2021-12-14)。患者発生は首都イスラマバードのあるパンジャーブ州で多くなっています。

アフリカ:西アフリカなどでの黄熱の流行

アフリカ西部から中部にかけて、10月から黄熱の流行が拡大しています(WHO 2021-12-23)。ガーナでは北部を中心に、11月までに200人以上の患者(疑い含む)が発生しています(WHO 2021-12-1)。コートジボアールでは首都アビジャン近郊でも患者が発生しており、都市型流行になることも懸念されています(WHO 2021-12-23)。ナイジェリアでは全土で1500人以上の患者(疑い含む)が発生している模様です(英国渡航医学センター NaTHNac 2021-12-17)。アフリカの赤道周辺諸国に滞在する際は、黄熱ワクチンの接種を必ず受けるようにしましょう。  

アフリカ:コンゴでのエボラ出血熱の流行が終息

WHOは12月16日に、コンゴ民主共和国の北東部で発生していたエボラ出血熱の流行が終息したことを宣言しました(WHO 2021-12-16)。10月に始まった流行で、11人の患者が発生し9人が死亡しました。